急性弛緩性麻痺(きゅうせいしかんせいまひ)という病名を聞かれたことがあるでしょうか?
聞きなれない病名ですが、小さな子供さんがいるご家庭では十分な注意が必要だと考えられます。
国立感染症研究所によると、2018年5月以降に86人の感染が報告されているそうです。
このうち28人が、10月以降に発症していて、ここ数週間で報告数が急増していると報道されております。
決して、人ごとではなく熊本でも2018年9~11月までに、2人の子供が急性弛緩性麻痺(きゅうせいしかんせいまひ)に感染されています。
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急性弛緩性麻痺(きゅうせいしかんせいまひ)とは
聞きなれない病名で、症状についてもあまりよく知られていませんよね。
急性弛緩性麻痺は、主に子供が発症する感染症で、発熱、咳と風邪の症状ととてもよく似ているといいます。
寒くなり始めた初冬では、発熱、咳、鼻水などの症状があっても「風邪ひいたかな?」程度の認識がほとんどですが「急性弛緩性麻痺」が急増している現在、決して安易な気持ちで見過ごしてはいけません。
「急性弛緩性麻痺」は、風邪のような症状のあとに手足などに麻痺(まひ)が起き、多くの子どもにその後遺症が残るとされています。
・手足に力が入らない
・手足がだらんと垂れたような状態になっている
・手足が痺れる
などの症状が見られたら、すぐに専門医を受診しましょう。
急性弛緩性麻痺(きゅうせいしかんせいまひ)の麻痺は、硬直するというよりも、力が抜けてしまってダラ~ンとなっている感じが多いと、小児科医がおっしゃっていました。
原因は?
2014年に米国で流行後、国内でも報告数が増えたとのことですが、はっきりとした原因は、まだ解明されていないそうです。
しかし「エンテロウイルスD68」というウイルスへの感染が指摘されています。
2014年8月~2015年1月の間に、EV-D68(エンテロウイルスD68)感染が確定された症例が1.153例となり、その大半が小児で、多くは喘息をもっていました。
エンテロウイルスD68(EV-D68)はエンテロウイルス属のウイルスの一つである。
エンテロウイルス属
・ポリオウイルス
・無菌性髄膜炎の原因となるエコーウイルス
・手足口病の原因となりうるエンテロウイルス(EV)71型
などが含まれ、エンテロウイルスD68もその中の一つだということになります。
風邪の原因となる「ライノウイルス」に類似するとのこと。
エンテロウイルスD68に感染すると、発熱や鼻汁、咳といった軽度なものから、重症になれば喘息様発作、呼吸困難等など症状を伴い、肺炎を含む様々な呼吸器疾患を引き起こします。
症例の多くは子供で、成人における感染例では、より軽度な症状や、感染しても重症化しないことがほとんどのようです。
エンテロウイルスD68が検出された小児の症例
患者:3歳女児。
気管支喘息の既往はなし。
2018年9月27日に38℃台の発熱を認め、28日に咳嗽と努力呼吸が出現した。
29日に努力呼吸が悪化傾向であったため救急要請され、当院搬送となった。
多呼吸と著明な陥没呼吸を認め、気管支喘息発作の診断で入院となった。
入院時、気管支拡張薬の吸入は有効であったが、その後呼吸状態および酸素化が悪化し小児集中治療室(PICU)に入室した。
高流量鼻カニュラによる呼吸管理と、全身ステロイド薬・β刺激薬持続吸入・マグネシウム薬で治療を行った。酸素投与期間は8日間、入院期間は12日間であった。
発症6日目に採取した鼻咽頭ぬぐい液のPCR検査でEV-D68が陽性であった。
退院時点(発症14日目)で神経学的異常は認めなかった。
大事に至らなくて良かったですよね。
この症例が、ニュース等で報道されている「急性弛緩性麻痺」だと考えられます。
つい、最近のことですよね。
風邪と考えていたものがこのような病状を引き起こすことから安易に考えていてはいけないことがお分かりになると存じます。
熊本県内でも感染者が
熊本市感染症対策課と国立感染症研究所などによると、9~11月にかけて同市内の医療機関から、手や足などに運動まひの症状が出る急性弛緩[しかん]性まひの患者2人が報告された。
今年5月に届け出が義務化されて以降、全国で86人が感染(10月28日現在)しており、県内では初の報告。
・1例目は4歳女児で左右の手にまひがあり、エンテロウイルスが検出された。
・2例目は5歳男児で手と足にまひがあり、検査を進めている。
と2018年11月9日に報じられています。
参照元:急性弛緩性まひ、県内初報告 熊本市で9~11月に2人
治療法は?
検査方法として、臨床症状のみでは「エンテロウイルスD68感染」かどうかを判断することは困難だとされています。
検査診断には、鼻咽頭ぬぐい液等の検体から、ウイルス分離あるいは遺伝子検出等の実験室診断が必要となりますが、インフルエンザの検査と同じ方法だと考えると良いです。
現在、エンテロウイルスD68感染に対する特異的な治療、抗ウイルス薬はないということです。
症状に応じた対症療法、支持療法が中心となります。
上記症例では、高流量鼻カニュラによる呼吸管理と、全身ステロイド薬・β刺激薬持続吸入・マグネシウム薬で治療が行われていますね。
その時の症状により、医師が的確な判断で行う治療法となるようです。
アメリカでは、気管支喘息(きかんしぜんそく)の既往を持つ小児では呼吸器症状の重症化のリスクが高いと言われているようですので、喘息を患うお子様には十分注意を払っていきたいですね。
予防法はある?
急性弛緩性麻痺やエンテロウイルスD68に対するワクチンは現在のところ、ありません。
(将来的にはワクチンも開発されるかも知れませんが・・対処が難しいですね。)
エンテロウイルスD68は飛沫(ひまつ)感染しますので、感染予防法としては、インフルエンザなどと同じように
・手洗いにより接触感染を防ぐ(色々なものを触った手で食事をしない)
・マスクなどで飛沫感染を防ぐ(くしゃみ、咳などによる感染を防ぐ)
今のところ、これらを徹底することが予防法の一つとなるようです。
何よりも症状が少しでも見られたら、すぐに医療機関にかかることが一番の予防策とな流のではないでしょうか?(早期発見で治すこと)
検査を受けたい場合はどうすれば良いの?
かかりつけの医師がいらっしゃれば、まずは電話などで相談されることをお勧めいたします。
また、それぞれの自治体(保健所等)に問い合わせることも可能です。
所在地:〒862-0971 熊本県熊本市中央区大江5丁目1番1号 ウェルパルくまもと4階
時間:平日8:30~17:15
定休日:毎週土曜日・日曜日、祝日、年末年始
感染症対策課:096-364-3189
これからの季節、風邪、インフルエンザなども急激に流行り始めます。
もちろん、日本全国、熊本においても同じことです。
飛沫感染するものが多いため、子供自身ができる予防法をよく理解させ、実行させることが大切ですね。
国立感染症研究所:多屋馨子室長より
「今後の推移を注意深く見ていく必要がある。
発熱やせきなどの症状のあとに力が抜けたように手や足を動かせないなどのまひの症状が子どもに見られたら、速やかに小児科の専門医がいる医療機関を受診してほしい。
と呼びかけられています。
急性弛緩性麻痺(きゅうせいしかんせいまひ)、風疹、麻疹などの感染が熊本でも確認されている以上、十分に気をつけながら予防を行いたいですね。
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